【薬屋のひとりごと】後宮の外に咲く毒の華【R指定】
第11章 初恋的回忆〜初恋の思い出〜②
(……この人、妃候補が増えてるの喜んでるの?)
壬氏を見て、月娘は呆れた目を向ける。
もちろん壬氏は、妃候補が増えた事を喜んでいるのではなくて。
月娘を上手く隠している事に満足していた。
そのお陰で誰にも邪魔されずに、月娘は着実に皇后への道を歩いている。
(現帝も随分と妃を集めているけど…。)
壬氏もその様になるのだと月娘は思った。
この頃、壬氏と月娘の間では随分と気持ちの温度差は出来ていた。
月娘が幼少期の壬氏と自分を思い出して、いい思い出が無かったと言ったのはこの頃からだ。
老先生にも認められて、皇室では壬氏の正妃になるのは月娘だと囁かれているのに。
肝心の壬氏との距離は離れている気がした。
(…瑞は何故私だけ呼んでくれかいのかしら…。)
こうして会えば、昔と変わらない笑顔で寄ってくる癖に。
他の女人の方が、月娘よりも壬氏と過ごす時間が多かった。
「…皇太子殿下…。」
月娘から離れない壬氏に、高順は咳払いしながら呼んだ。