【薬屋のひとりごと】後宮の外に咲く毒の華【R指定】
第11章 初恋的回忆〜初恋の思い出〜②
「…皇太子殿下…。」
月娘は袖を隠して、壬氏の前で軽く頭を下げた。
「……顔を上げて、月娘。」
月娘は壬氏の言葉に従いゆっくりと顔を上げる。
そして壬氏の目を捕える。
「久しぶりに会う月娘は、特段に美しい。」
壬氏は月娘の顔を両手で覆って、ニッコリと笑って言った。
「ぶはぁっ!」
「大丈夫か?僑香?色々噴き出てるぞ。」
「……お構いなく…。」
僑香は相変わらず流れる鼻血を拭きながら2人から顔を逸らした。
壬氏に甘い声と顔で囁かれても、月娘は口元を袖で隠したまま無表情で壬氏を見上げている。
月娘はチラッと雪我を見た。
「…殿下、雪我様がお待ちですよ…。」
この頃壬氏は色んな女人を自分の宮に招いていた。
女人達とどんな時間を過ごしているのかなんて、月娘は知る由も無い。
月娘だけは、昔の様に壬氏に呼ばれる事は無くなっていた。
「…ああ…。随分と宮女に志願した女人が増えたな。」
壬氏は含んだ笑みを浮かべると、同じ様に目だけで雪我を見た。