【薬屋のひとりごと】後宮の外に咲く毒の華【R指定】
第10章 初恋的回忆〜初恋の思い出〜
「大丈夫か?怖くないか?」
「……うん…大丈夫…。」
夏潤が来なくても平気だったが、やはり心配そうなその声を聞いて、月娘は少しの嬉しさに目を細めた。
「お前はまだマシだぞ。僑香はしばらく来れないぞ。」
「…………。」
僑香の名前を聞いて、月娘の明るくなった顔がまた曇った。
「…僑香には悪い事をしてしまったわ。」
軽い気持ちで手伝って貰った事が、彼女を傷付けてしまったのだから。
「……夏兄様…。私僑香を侍女にする。」
月娘は袖の中で拳を強く握った。
「そして瑞の事も僑香の事も幸せに出来る皇后になる。」
「………………。」
月娘の声がハッキリ聞こえた時に、夏潤は今の顔を月娘に見られなくて良かったと思った。
それ位顔を歪ませても、誰にも見られないで済んだのだから。
「……皇太后の血縁者が今度宮女に志願するそうだぞ。」
夏潤の言葉に月娘は目を見開いた。
「コレからどんどん他の官僚の娘も勉学を学び皇后を競うんだ。」
壬氏にとっての1番は自分ではない。
そんな現実が突き付けられた。