【薬屋のひとりごと】後宮の外に咲く毒の華【R指定】
第10章 初恋的回忆〜初恋の思い出〜
「月娘…。お前はそんな争いに入ってまで皇后になりたいのか?」
月娘とは、皇后になりたいと願う様な欲の強い女ではなかった。
月娘の幸せとは、自分の大切な人達が笑顔で自分の周りに居る。
そんな些細な事を幸せだと思える女だと、夏潤は知っていた。
「その先に、お前が願う未来はあるのか?」
月娘が望む未来。
月娘は夏潤の言葉にすぐにそれを思い浮かべる事が出来た。
少し大きく育った自分の側には、いつもの様に僑香が側にいて、夏潤がそれを見ながら笑っている。
月娘はそんな2人と一緒に居ながら目を細めて、そして目線は他に移される。
そんな月娘の姿の先にある壬氏の姿。
壬氏もまた、そんな月娘の姿を見ながら微笑んで月娘に手を伸ばす。
ああどうやら…。
自分は思ったより欲深い様だ。
月娘の望む未来に、壬氏の姿をハッキリと思い浮かべる。
もう後戻りなんて出来ない感情だった。
「なるよ。瑞の唯一の皇后に。」
まだ齢たった7歳だった。
それでも壬氏と月娘の願いは同じだった。
強く願った思いが。
ゆっくりとその縁を解いていくとは。
その時は壬氏も月娘も気が付いてはいなかった。