【薬屋のひとりごと】後宮の外に咲く毒の華【R指定】
第10章 初恋的回忆〜初恋の思い出〜
月娘はその日初めて枋太師から罰を受けた。
理由はどう考えても自分が悪かったので、月娘は静かに父親が与える罰に従った。
この頃は体罰も無く、蔵に一晩夕飯抜きで閉じ込められる程度だった。
それだけたが、鼠が住んでいるその蔵は居心地が良いわけではなかった。
灯りもなく、高い位置にある窓から月明かりがかろうじて入ってくるだけだ。
少しうたた寝しただけで、月娘は鼠に齧られる。
「痛っ!!」
その痛みで何度も目が覚めて、長い夜を一人で過ごしていた。
「……………。」
不思議と怖くなかったのは、窓の外に大きく光る1つの星が見えたからだ。
壬氏への手紙にも書いた、キラキラ光る星。
その星を見る度に壬氏を思い出せたから。
月娘はそんな夜でも気持ちは温かいモノだった。
「月娘。」
蔵の外から、静かに自分を呼ぶ声が聞こえた。
「夏兄様…。」
月娘はすぐにその声が夏潤の声だと分かる。