【薬屋のひとりごと】後宮の外に咲く毒の華【R指定】
第10章 初恋的回忆〜初恋の思い出〜
それでも今の月娘は、書いた手紙以上の言葉を知らない。
壬氏はいつもキラキラ輝いていて。
綺麗な物を見る度に、月娘は彼を思い出した。
それ以上でもそれ以下でも無かった気持ち。
(瑞は、私の手紙を読んでガッカリするかしら……。)
月娘はその時、初めて壬氏を喜ばせる言葉を綴らない自分を恥じた。
ああ…そうか…。
月娘はその時気が付いた。
私は瑞を喜ばせる為に皇后になる勉強をしているんだ。
自分がすべき事がハッキリ分かった。
そんな瞬間だった。
「…… 月娘の詞は老先生から評価されていなかったか?」
「……………。」
結局月娘が壬氏に贈ったのは、あのままの手紙だった。
困惑している壬氏の横で、高順はどうしたものかと悩んでいた。
「…… 月娘様は出された課題を他の者の手を借りて仕上げていた様です。」
悩んだ結果、報告そのままの事を壬氏に伝えた。
高順のその言葉を聞いて、壬氏は思わず笑ってしまった。