【薬屋のひとりごと】後宮の外に咲く毒の華【R指定】
第10章 初恋的回忆〜初恋の思い出〜
手直しされた綺麗な言葉より。
壬氏は月娘から贈られた言葉の方が喜ぶだろうと。
僑香は分かっていたから。
「……………。」
月娘は理解出来ないけど、壬氏からの手紙を読んだ。
何度も何度も目を通して、そっと手紙を机に置いた。
「……瑞って…私の事が好きなの?」
目線は手紙のままで、月娘はボソッと僑香に聞いた。
「……今さら気が付いたらのですか?」
そんな月娘に僑香は呆れた様に言った。
僑香がそう思ったのは、手紙だけが原因では無い。
この前初めて見た皇太子だったが。
彼が月娘を見る目や、月娘に触れた時の表情でそんな事は容易に想像出来たからだ。
「……そうなの……。」
そう言って目を伏せた月娘の頬は少し紅潮していて。
壬氏が書いた手紙をそっと指でなぞった。
この頃はまだ紙が貴重で、文章などには木管が使われていた。
だけどなぞった紙はとても上質で、壬氏からよく匂う沈香の香りがした。
人懐こい子だと思っていた。
そこに親しみが湧いて、壬氏と一緒にいる時間は楽しいのだと思っていた。
それは夏潤や僑香以外から初めて月娘が感じた、身内以外からの好意だった。