【薬屋のひとりごと】後宮の外に咲く毒の華【R指定】
第10章 初恋的回忆〜初恋の思い出〜
それは彼の生い立ちがそうさせた。
壬氏は皇太后の不貞から生まれた子供だと言われている。
それはこの幼い壬氏にも理解出来るほど悪意のある噂だった。
壬氏はたまに父親である前皇帝を見ている時がある。
たまに見かける前皇帝は、壬氏が側に居ても見向きもしない。
壬氏は父親が自分に興味が無い事を、幼いながら理解している。
そんな父親よりも、現皇帝の兄の方が、壬氏に声を掛けてくれていた。
そんな兄も、皇太子から皇帝になった時に、後宮は更に大きくなり。
皇太子の頃は10年間、正妃が1人だったのに。
皇帝になったら、妃の数が増えたと聞く。
壬氏はまだ、皇帝の意味も、皇太子の意味もちゃんと理解は出来ていない。
だけど、その見据えた自分の未来に、なんの気持ちも湧かないのも事実だ。
「月娘様は立派な正妃様になるでしょう。」
高順はニッコリ笑って壬氏に言った。
「正妃?!誰の?!」
「皇太子様の正妃様です。」
それが自分の嫁に月娘がなると言われているのだと、すぐに理解出来た。