【薬屋のひとりごと】後宮の外に咲く毒の華【R指定】
第10章 初恋的回忆〜初恋の思い出〜
しかし壬氏の心配を他所に、月娘はその場から離れる素振りを見せなかった。
それどころか壬氏が登った木に近付いてきて、壬氏が登ったであろう箇所を確認する。
「……降りれるの?」
「………………。」
月娘が首を傾げて聞くと、壬氏は口をグッと閉じた。
降りられない。
そう言うのが悔しい位に恥ずかしかった。
「あなたは誰から隠れているの?」
「……高順……。」
何も言わない壬氏に月娘が聞くと、壬氏は顔を晒しながら言った。
「…私もね。父様から逃げてきたの。行きたくないって言ったのに皇室に連れて来たから。」
月娘はそう言うと、グッと木にしがみ付いて、壬氏と同じ様に木を登りだした。
「危ないぞ!!」
その光景を見た壬氏は思わず叫んでしまった。
だけど壬氏の心配を他所に、スルスルと月娘は簡単に壬氏の元まで上がってきた。
(え?俺より早い…。)
自分より簡単に上がってきた月娘に、壬氏は唖然としたが月娘は構わず壬氏の前まで来たのだった。