【薬屋のひとりごと】後宮の外に咲く毒の華【R指定】
第10章 初恋的回忆〜初恋の思い出〜
「わぁ…。これは降りれないね。」
月娘は下を見ながら面白そうに笑って言った。
近くで月娘を見た衝撃は、すぐに壬氏の全身を覆った。
おかしい位に胸が高鳴って。
そんな風に人を見た事が無いのに、やっぱり月娘から目を離せなかった。
可愛らしい。
当時壬氏が知っている言葉を並べても、その時の月娘を表現出来なかった。
それは今でも一緒だ。
月娘はいつだって、壬氏に新しい気持ちを沸かせる。
そして壬氏はいつもその気持ちを表す言葉を知らない。
「…ねぇ…。2人で隠れて、どっちの大人が迎えに来てくれるか勝負しようか。」
そうニッコリ笑った月娘に、壬氏は何も言えずにただ月娘の顔を見ていた。
今だったら分かる。
月娘は降りれなくなった壬氏に気が付いて、自分も登ってくれたのだ。
大人を呼んで来て、壬氏の自尊心を傷付ける事も無く。
一緒の目線まできてくれて、壬氏1人を探す大人増える様に。
月娘とは昔からそんな女人だった。
壬氏がそんな月娘に気が付くのに。
随分と時間がかかった。