【薬屋のひとりごと】後宮の外に咲く毒の華【R指定】
第9章 花街に毒の花が咲く⑤
「…それじゃあ罰にならないだろう、僑香…。」
夏潤は僑香の言葉を聞いても、向きもしないで言った。
そんな夏潤を僑香は思い切り睨んだ。
「……こんな事、皇弟殿下に知られれば首が飛びますよ!!」
今まで僑香は夏潤にそんな事を言った事は無い。
それをわざわざ言うという事は…。
月娘はよっぽど皇弟と密な時間を過ごしたと夏潤に教えるモノだった。
僑香の言葉を聞いて、夏潤はハッと笑った。
「なら一緒に処刑されてくれるか?」
枋太師も僑香も。
黙認したこの屋敷の人間全てが処分されるなら。
それならそれで夏潤はどうでも良かった。
夏潤の言葉に僑香は言葉を飲んだ。
(まともに取り合えない…。)
どんな言葉を投げても、目の前の男には届かないだろう。
そんな虚しさに襲われた。
「……私は大丈夫よ。僑香…。」
「お嬢様…。」
悔しそうに泣いている僑香を見て、月娘は思わず声を出した。
それで僑香が笑顔になるなら、声を出しただけで響くこの痛みも安いモノだ。
(なのに本当に僑香は主人想いじゃないわね…。)
どんなに慰めても僑香の涙は止まらなそうだ。
だけどその僑香に、月娘は痛みを忘れられる位に心が温かくなった。