【薬屋のひとりごと】後宮の外に咲く毒の華【R指定】
第9章 花街に毒の花が咲く⑤
「……早く月娘に会いたいな……。」
不貞腐れた様に、それでも過少し笑みを浮かべてボソッと呟いた壬氏に高順は目を細めた。
「…きっとすぐに会えますよ…。」
月娘様はきっと壬氏様が思っているより。
その心は慈悲深いモノだと分かっている。
長年無視し続けた婚約者をあんなに一途に思える人だから。
壬氏の執務室は、そう慰める高順の言葉で収まった。
壬氏はすぐに月娘に向かいたい気持ちを抑えて、やはり返事が無くても月娘に手紙を書く。
それは少しだけ昔を思い出して、壬氏は今も昔も月娘だけを好きで、その変わらない想いが自分でも心地よかった。
「うっ…ううっ…お嬢様…大丈夫ですか?」
僑香の泣き声で月娘は薄っすら目を開けた。
うつ伏せに寝ていても僑香の顔を見れた。
しかし、麝香の匂いでそこがまだ夏潤の部屋だと月娘に教える。
それでも僑香の顔を見て、月娘は安心した様に目を細めた。
「うっ鎮痛剤を使って下さい!!」
夏潤から与えられたのは化膿止めの塗り薬だけで、痛みを抑える薬は与えられなかった。