【薬屋のひとりごと】後宮の外に咲く毒の華【R指定】
第9章 花街に毒の花が咲く⑤
月娘がその事でどんなに傷付いていたか。
今更ながら壬氏は分かった。
「… 月娘様はあの後体調を崩された様ですよ…。」
見かねた高順が、自分が知っている情報を壬氏に教えた。
それを聞いた壬氏は慌てた。
月娘が体調を崩したなら、あの日思い切り抱いた自分のせいだと自負しているからだ。
「枋太師の家に見舞いに…。」
ガタッと椅子を立った壬氏に、高順がギロッと睨んだ。
「あなた様が行かれては、余計月娘様に負担がかかるだけです。」
高順からしたから、お気に入りのおもちゃが無いと、泣き騒いでいた壬氏の様に思えた。
心当たりがある壬氏はグッと言葉を飲み込んだ。
「……はぁ………。」
壬氏はまた椅子に座ると頭を抱えてため息を吐いた。
頭の中が月娘だけになり、そんな事になりたくないから月娘を避けていたのに。
結局はこうして壬氏の全てを月娘は支配する。
だけど、怖がっていたこの感情は、意外にも心地よかった。
頭の中を月娘だけで一杯にする。
それは思いの外、気分が良い事だった。