【薬屋のひとりごと】後宮の外に咲く毒の華【R指定】
第9章 花街に毒の花が咲く⑤
「…… 月娘から文の返事が来ない……。」
壬氏は執務室でボソッと呟いた。
後宮に戻ってから壬氏がした事は、彼女を正妃に迎えたいと皇帝に志願した事だ。
枋太師にも同じ様に告げた。
2人はすぐに承諾をしてくれた。
だけど、枋太師に告げた時に彼の目が少し泳いだ。
壬氏はそれに気を取られながらも、早く月娘との約束を取り次げたい気持ちの方が大きかった。
月娘にそれを伝えても一向に返事が来ない。
『会いたい』と伝えても、月娘からは喜ぶ様な返事が無いのだ。
壬氏の落ち込み様に高順は目を顰めた。
皇命でなければ動かない月娘らしいと言えばらしいが。
2人の関係がもう以前と違うという事は分かっていたから。
あんな時間を2人で過ごしたのに、月娘から何の連絡も無い。
それは壬氏を不安にさせたし自身を責めた原因にもなった。
「……私は月娘にいつもこんな思いをさせていたのだな…。」
月娘と密な時間を過ごしていても、その後月娘を避けていた。