【薬屋のひとりごと】後宮の外に咲く毒の華【R指定】
第9章 花街に毒の花が咲く⑤
「…夏兄様…。私は瑞を愛しています…。」
そう微笑んだ月娘に、夏潤の手に力が入った。
もう心は決めていた。
壬氏が月娘の心に応えてくれるなら。
それに応じるのが正妃と言うモノだ。
「…俺の月娘…。しばらくは動けないぞ……。」
そう言って腕を振り上げる夏潤を見て、月娘はまた目を瞑った。
バシッ!!
「ぐっ!!!」
何度も何度も同じ箇所を殴られて、月娘は意識が遠のいた。
だけど、意識が無くなった後に、目の前の男が自分に何をしてくるか…。
想像すらしたく無かったから、月娘はただ痛みに集中した。
(大丈夫…。これが終われば僑香が来てくれる…。)
月娘はひたすらこの体罰が終わるのを願って。
心の中は壬氏でいっぱいにした。
壬氏が月娘が全てと言うなら月娘もそうだった。
(…瑞……私だけの皇弟……。)
もう痛みの涙は出なかった。
流れた涙は全て壬氏への想いだけだ。