• テキストサイズ

【薬屋のひとりごと】後宮の外に咲く毒の華【R指定】

第9章 花街に毒の花が咲く⑤


涙で濡れている月娘の頬を掴んで、夏潤は月娘の顔を覗き込んだ。

「いつもの様に皇弟には興味無いと、皇室には入る気は無いと、俺に縋ってみろ。」



月娘は目を薄っすら開けて夏潤を見た。

その顔を見て、月娘は理解が出来なくなる。



何故この男がこんな顔をしているのだろう。

まるで痛みを我慢している様な…。

自分が傷付いている様な。



一瞬、この痛みから逃れるのなら。

いつもの様にやり過ごして、この男が望む言葉を告げる事も頭に浮かんだ。



『…俺はもうはらを決めた。お前はずっと俺の女人だ。何があっても。』



そんな時に浮かんだ壬氏の言葉。



目を見開いても、目の前の夏潤では無くて、あの時の壬氏の顔しか見えなかった。



ずっと壬氏だけが逃げているのだと思っていた。

だけど夏潤の支配から逃げたくて、壬氏を遠ざけていたのは月娘も同じだった。



(ああ…瑞……。私……私も……。)




もうはらは決めた。



月娘は奥歯を噛み締めて夏潤を見上げた。
/ 408ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp