【薬屋のひとりごと】後宮の外に咲く毒の華【R指定】
第9章 花街に毒の花が咲く⑤
月娘は夏潤の着物を掴むと、思い切り押し返した。
月娘と同じ様に、夏潤の着物も音を立てて破れた音がした。
夏潤は月娘が押し返しても、更に強い力で押さえつけてくる。
現れた夏潤の胸元に、月娘の爪がつけた痕から血が滲んでいた。
なのにこの大きな男は少しも月娘から離れなかった。
「辞めて!辞めて夏兄様!!」
どんなに懇願しても、夏潤は月娘の身体から唇を離さない。
月娘をしっかりと抱きしめて、服を剥ぎ取ると、夏潤の目に月娘の肩が見えた。
そこにしっかりと付いていた歯形を見て夏潤は奥歯を噛み締めた。
ハッキリと月娘を傷付けようとして付けられた痕だった。
月娘の身体にこんな事が出来るのは、月娘が何者かも知らない馬鹿か…。
やはり皇弟だけだ。
「!!!」
壬氏が与えた痛みと同じ痛みが月娘の肩に広がった。
「……ああ……。」
壬氏が付けた痕をなぞられるその虚無感に、月娘は涙を流して声を漏らした。
こんな事許されるはずが無い。
やっと……。
やっと心を決めたというのに。