【薬屋のひとりごと】後宮の外に咲く毒の華【R指定】
第9章 花街に毒の花が咲く⑤
夏潤はわざわざ壬氏に、月娘と兄妹だという風に匂わせた。
そんな事を言う理由は明確で、壬氏は昔『不貞の子供』だと周りから言われていた時期があった。
その時から皇室を嫌い、東宮になるのを嫌がる様にまでなった。
壬氏はその様な不貞を嫌っていた。
だからワザと月娘に嫌悪感を持たせるために言ったのだろう。
(今さらそんな事で瑞が私を遠ざける訳ない…。)
そう思いながらも、月娘は袖の中で拳を握った。
振り払う様にそう考えたのは。
その頃壬氏がどれほど苦しんでたか幼い頃から見ていたからだ。
壬氏への申し訳なささに、月娘は目を瞑った。
「……1つ気に入らない事があるとしたら…。」
夏潤の言葉に月娘は目線を上げた。
「お前を買ったのが、俺では無くあの内官だと言う事だな。」
「…………………。」
とんでもない事を平気で言うものだ。
その図々しさに、月娘は思わず顔を歪めた。
昨夜現れたのが高順で無く夏潤だったのなら、今朝の様な幸せな気持ちになれるわけが無かった。