【薬屋のひとりごと】後宮の外に咲く毒の華【R指定】
第9章 花街に毒の花が咲く⑤
思惑通りに、満足そうに笑みを浮かべる夏潤に、月娘は一瞬肩の力を抜いた。
この男は本当に食えない相手だ。
世間では月娘達が本当の兄妹の様に言われているが、全くの事実無根だった。
2人の関係は従兄弟同士で間違いは無い。
間違っているのは関係ではなくて。
夏潤の月娘への、この粘着質な執着だろう。
(……この男の私への思いは兄妹愛では無い。)
月娘が皇室に入ってしまったら、2度と手に入らないと分かっているから。
夏潤は絶対に月娘を皇室に入れさせようとはしない。
高侖(ガオロン)との結婚の話だって、ただ彼を利用しただけだ。
自分は矢面に立たず、皇室から月娘を離し。
高侖だったら簡単に月娘を奪えると思ったのだろう。
(……あの時は瑞に疲れていたからと、恐ろしい事を諦めてたわ…。)
逃げても追いかけてくるだろう夏潤に疲れて、どうでもいいと諦めていた自分に気持ちを切り替えた。
今は何があったって壬氏と添い遂げたい。
もう2度と迷わない。
私の今生の相手は瑞だけ。