【薬屋のひとりごと】後宮の外に咲く毒の華【R指定】
第9章 花街に毒の花が咲く⑤
夏潤は、月娘が皇室で評価を受ける方が、いつも怒りが大きいから。
今回の事では夏潤からキツく何かをされるとは思わなかった。
それでも僑香には嫌な部分は見せたくない。
月娘は僑香が宮から離れていくのを見送って、夏潤の宮の中に入って行った。
キツくなる麝香の香り。
夏潤からいつも香る香りだった。
その香りに月娘は顰めた顔をする。
もううんざりだった。
この匂いも夏潤も全て。
「月娘。」
案内された部屋は、いつもの躾をされる為の部屋だった。
簡素な部屋には、月娘を痛める時に月娘が暴れない様に拘束する為の拘束具もある。
その拘束具を見ながら月娘は目を細めた。
夏潤はギシッと寝台に座った。
その寝台にはいつも夏潤の体罰の後に動けなくなった月娘が何度も寝た場所だ。
窓もあまり無く薄暗い部屋の中で、夏潤と月娘はお互いを見合った。
「………よく考えたね月娘。お前が皇室に入りたく無い気持ちはよく分かったよ。」