【薬屋のひとりごと】後宮の外に咲く毒の華【R指定】
第9章 花街に毒の花が咲く⑤
やっと横になれる。
月娘は扇で隠した口元で、安堵の息を吐いた。
馬車から降りようとする月娘の手を夏潤はグッと掴んだ。
「!」
「夏潤様!!」
僑香は今度は慌てて夏潤の腕を掴んだ。
「……分かってるだろう…僑香…。」
そんな僑香を睨む様に夏潤は見下ろした。
「枋家の家訓は厳しいのを。」
「………………。」
枋家はとても厳しい家だった。
それこそ侍女が体罰で死んだとしても、誰も気にしないほどに。
そこまで徹底された枋家の管理は潔癖で。
下女や下男から管理され、何処から見ても完璧なのが枋家だった。
それはその家長の枋太師は勿論。
月娘もまたそうでなければならない。
今回の件に関して、許されたのは皇室のみで枋家での罪はこれから償うのだった。
そしていつも、月娘に罰を与える役は目の前夏潤だった。
「…大丈夫よ。僑香。」
月娘はそっと僑香の肩に手を置いた。
そして僑香を気遣う様にニッコリ笑う。
「『今回は』確かに私のしでかした事だもの。覚悟してたわ。」
そう夏潤を見て、月娘は目を細めて笑った。