【薬屋のひとりごと】後宮の外に咲く毒の華【R指定】
第9章 花街に毒の花が咲く⑤
「!」
本当はすぐに横になりたい位に、月娘は疲弊していた。
しかし、そんな風に体調の悪さをこの男に晒したら、昨夜壬氏と何があったのかバレてしまうだろう。
「…俺が怖いか?あんな事して怒られると思ってるのか?」
「!」
夏潤が勘違いしているなら、そう思わせていた方が良いと思った。
「……まさか…。夏兄様だったら昨日の私の行動は喜んでくれると思ってます。」
月娘の言葉を聞くと、夏潤はさらに笑みを深めた。
夏潤は月娘が皇室に入る事を拒んでいる。
だから月娘の悪名が強くなるほどこの男は喜ぶのだった。
「あんな愚行をしても、内官を寄越してきた皇弟はよほどお前に惚れているのだろう。」
「…まさか……。今も昔もあの方は私に興味はありません…。」
この男に壬氏との事を知られてはいけない。
月娘は夏潤の前では皇室に入る事を望んでないように見せていた。
夏潤の気を逆撫でしない為に。
それは随分と昔から。
そうして険悪な雰囲気の中で場所は枋家(ほう)に着いた。