【薬屋のひとりごと】後宮の外に咲く毒の華【R指定】
第8章 【R指定】花街に毒の花が咲く④
「月娘様と同じ髪色と目の色で、月娘様にそっくりな美形の顔…。あの立派な体躯で負け知らずの将軍でしたら、噂は絶えないでしょうね…。」
さぞかし女人にもモテそうだ。
猫猫がそう呟くと、壬氏が不機嫌そうな顔で猫猫を睨んだ。
「……なんですか?壬氏様…。」
「お前が俺の前で他の男を褒めるからだろ。」
しかもあんな場面でナニが無いなどと叫ばれたのだから。
「………………。」
壬氏の言葉に、猫猫が面倒くさそうな顔をする。
「壬氏様が美しいと言っても、後宮内の人間しかお目にかかれませんからね。夏潤様は花街に居た私でも知ってます。」
夏潤が禄青館に遊びに来たら、小姐達がお祭り騒ぎだった。
「…夏潤はよく妓楼館に来てたのか?」
「いえ、殆ど戦場に居る人なので、滅多にお目にかかれない人でしたよ。」
猫猫の言葉に、壬氏は少し安心した。
月娘の側に夏潤の様な男が居るのは気に入らなかったが、月娘は妓楼館で遊ぶ男に興味は無いだろうから。
「しかし、本当に遊びに来ているって感じで、特定の妓女を作る訳でも無く同じ妓女と夜を過ごした事が無いので、夏潤様には心に決めた女人が居るともっぱら噂でした。」