【薬屋のひとりごと】後宮の外に咲く毒の華【R指定】
第8章 【R指定】花街に毒の花が咲く④
「……夏兄様(ハ兄様)……。」
月娘はそう呟くと、扇の奥で顔を顰めた。
「やっと出てきたか、俺の小可愛(可愛い人)」
「……俺の?小可愛?」
月娘を抱き抱えているのは、鄭夏潤(チョン・ハユン)だった。
壬氏は目の前で月娘が他の男から可愛い人と呼ばれて、すぐに顔を固くした。
高順が壬氏を止めなかったら、そのまま月娘を奪い返していただろう。
「月娘様の従兄弟です。」
「知ってるよ。」
壬氏の耳元で小さな声で高順は言ったが、そんな事は分かっている。
例え身内でも、月娘を抱き抱えられたらいい気はしないのだ。
しかし、当の夏潤は壬氏達など居ないように、月娘だけを見ていてその手を離そうともしていない。
「……ビックリしたよ。花街に遊びに来たら、お前が縁台に立っていて客を取っていたのだから。」
夏潤の言葉に、月娘はピクッと肩を震わせた。
「戦で稼いだ金注ぎ込んでも買えなかったから、どんな奴が買ったかと思ったら…。」
そこでやっと夏潤はチラッと壬氏達を見た。