【薬屋のひとりごと】後宮の外に咲く毒の華【R指定】
第8章 【R指定】花街に毒の花が咲く④
禄青館を後にすると、月娘達は花街の入り口に用意していた馬車まで向かった。
馬車は2台あり、壬氏と高順と猫猫はこのまま後宮に帰るのだ。
高順と僑香はこのまま月娘を連れ帰りそうな壬氏に冷や冷やしながら、前を歩く2人を見ていた。
「……じゃあ…、また後宮で……。」
馬車の前まで来ると、月娘は振り返って壬氏に言った。
「…いや…次は東宮だ……。」
壬氏は月娘の耳元まで顔を近付けると、月娘にだけ聞こえる様にそう言った。
壬氏の言葉に月娘は顔を少しだけ赤らめたが、扇と羽織で顔を隠している為、他の者には分からなかった様だ。
短い挨拶を済ませて、月娘が馬車に乗ろうとしたその時だった。
「!!!」
誰かから腕を思い切り引っ張られて、月娘は体勢を崩した。
壬氏が月娘に腕を伸ばした瞬間に、月娘の身体は大きな腕に包まれた。
「月娘。」
「!」
顔を上げなくても、月娘はこの腕の中が誰なのか分かった。
聞き慣れた声に、麝香の香り。