【薬屋のひとりごと】後宮の外に咲く毒の華【R指定】
第8章 【R指定】花街に毒の花が咲く④
「薬屋。昨日はありがとう。」
「昨日はとても楽しめたわ。今度改めてお礼をするわね。猫猫。」
「………………。」
朝から無駄にキラキラ輝いている2人を見て、猫猫は目を細めて巻き込まれた不満を顔で表している。
「あら、面白い顔をするわね。猫猫。」
猫猫の眉間の皺をなぞって、月娘はいつもの様に扇で口元を隠しながら笑った。
(流石皇室です。)
くたびれていた月娘は輝きを取り戻し。
壬氏は何事も無かったかの様な素振りだ。
このキラキラした2人を作り上げるのに、壬氏を月娘からはぎ取り、疲労で干からびた月娘を磨き上げた僑香は、心の中で自分をまず褒めた。
しかし扇を持っている月娘の手はフルフル震えていた。
気丈な月娘であったが、もうそろそろ限界そうだ。
「月娘様、妓楼館を出る時は顔を隠して下さい。」
壬氏はそう言うと、月娘の顔を羽織ですっぽりと隠した。
笑顔で言っているが、少しも他の男に月娘を見せようとしない気迫が感じられる。