【薬屋のひとりごと】後宮の外に咲く毒の華【R指定】
第8章 【R指定】花街に毒の花が咲く④
とても疲れたけど、勿論嫌な気分では無かった。
むしろ、今まで過ごした時間の中で1番幸せな時間だった。
「……あの方が、私を皇室に迎えるって…。今度はすぐにと約束してくれたわ…。」
壬氏の言葉を思い出して、今更胸が熱くなり、月娘は少し涙を滲ませてた。
「…良かったです…。お嬢様…。」
僑香の方はもう既に泣いていた。
かなり遠回りした2人だったが、今度こそは夫婦になれる。
月娘も僑香ももう疑わなかった。
「………………。」
先に支度を終えたのは壬氏の方で、壬氏はまだ来ない月娘を心待ちにしてソワソワしていた。
「!」
扉が開いた時、壬氏は思い切り扉の方を振り向いた。
そして月娘を見つけると、時間が止まった様に息を飲んだ。
僑香と一緒に入って来た月娘は、下を向いて俯いていたけど、その顔は少し赤く染まり、恥ずかしそうに目を伏せていた。
自分が贈った簪を、こんなに綺麗に飾れる女人は他に居ないだろう。