【薬屋のひとりごと】後宮の外に咲く毒の華【R指定】
第8章 【R指定】花街に毒の花が咲く④
入浴をしている月娘の髪を、壬氏が気持ち良さそうに触っている。
気持ちよくなっているのは壬氏だけで、月娘の表情が段々暗くなってくるのを、僑香は見逃さなかった。
「壬氏様…代わります…。」
壬氏を少し腕で小突いて、月娘の髪の毛を受け取った。
「………………。」
不満げに僑香を見る壬氏に、僑香はニッコリ笑った。
「壬氏様が贈ってくださった簪…。飾っている綺麗な月娘様を見たく無いですか?」
「っ!見たい!」
僑香の言葉に壬氏はパァッと顔を明るくした。
「なら、少し席を外して下さい。」
僑香は笑みを崩さないで、壬氏を扉の外に放り投げた。
「………俺は今邪魔扱いされたのか……?」
パタンと閉まる扉を見て、壬氏は呆然とした。
「あなた様も支度しますよ。」
僑香から受け取った壬氏の腕を引いて、高順は壬氏を月娘から遠ざける。
「……はぁ………。」
「大丈夫ですか?月娘様…。」
「……大丈夫よ……。」