【薬屋のひとりごと】後宮の外に咲く毒の華【R指定】
第1章 後宮の外に毒の華が咲く
………不思議だ……。
この男はとてつもなく優秀なのに……。
コト、私の事になるといつもポンコツだ……。
いつも見当違いの答えを出して、私と距離を置く。
「あの時とは全然状況が違います。彼女は貴方に何もしていないでしょう?」
一方的に壬氏が猫猫に構っているだけだ。
「……私の周りに居る女人が気に入らないのだろ?」
「……………。」
どんな答えを求めて、そんな風に聞いているのだろうか。
『そうだ』と言えば、その下がった眉はまた上がって、自信満々な笑顔を見せてくるのだろう。
壬氏は自分からは距離を取るくせに、月娘から離れようとするといつも今みたいに悲しそうな顔をする。
そのどっち付かずの壬氏の態度が心底憎かった。
「さっき言ったでしょう?心底どうでもいいのよ。」
「月娘!!」
どうでもいいと言いながら、媚薬を持ってきた侍女を罰して。
壬氏に付き纏う女人にも罰を与える。
月娘だって、同じ様に離れる事が出来ないのを、壬氏は知っている。