【薬屋のひとりごと】後宮の外に咲く毒の華【R指定】
第1章 後宮の外に毒の華が咲く
「私の事は月娘様かお嬢様と呼びなさい。壬氏。」
月娘は手に持っていた扇で口元を隠して、目を細めて壬氏に言った。
「………………。」
悔しそうな壬氏の顔を見て、少し固唾を下げた。
彼が後宮入りして壬氏となって。
良かった事と言えば、こうして後宮で会った時は、壬氏より位が高い自分の身分を引き合いに出せる事だろう。
「………お嬢様って歳かね……ボソッ」
「💢」
誰のせいで婚期を逃したのだろうか。
流石に壬氏の言葉に、後ろにいる高順の顔が真っ青になった。
月娘が冷静でいられたのは、その高順の顔を見れたからだ。
「……ご希望なら、すぐに奥様と呼ばせてあげるわよ。」
「何?」
月娘の言葉に、壬氏は顔を青くして身を引いた。
この期に及んで、月娘がまだ壬氏との婚姻を望んでいると思ったのか……。
ナルシストが過ぎて、その勘違いに青筋が立った。