【薬屋のひとりごと】後宮の外に咲く毒の華【R指定】
第6章 【R指定】花街に毒の華が咲く②
「……壬氏様……。」
「………………。」
高順の頬と胸元に付けられている紅のせいで、彼女がどう高順に触れたかと言う事が嫌でも分かった。
壬氏は目を細めて、高順の拘束具を取り外していく。
その音を聞いたまま、月娘は顔を上げずに、ただ首を垂れているだけだった。
「高順の処分は後で伝えるから、今は部屋から出ていけ。」
壬氏のその言葉に、月娘は顔を下げたまま言った。
「高順は私に触れておりません。私が一方的に触れただけです。」
「黙ってろ月娘。お前が男を庇えば俺の怒りが増すだけだ。」
高順は拘束具が外されると、壬氏に一礼をして部屋から出て行った。
彼をどうすれば気が済むのか、自分でも分からなかった。
今、湧き上がる怒りの収め方など皆目検討がつかない。
「……お前は命令なら俺の言う事を聞くんだな…。」
月娘を見ないで壬氏はそう呟いた。
「………………。」
彼の声は聞こえていたが、月娘は頭を上げなかった。
壬氏の目に、自分が贈った簪が見えた。
それを挿したのは高順なのだろう。