【薬屋のひとりごと】後宮の外に咲く毒の華【R指定】
第6章 【R指定】花街に毒の華が咲く②
高順を見て、月娘がフッと笑った。
「私が簪が欲しくてこんな事をしていると?」
「……いいえ…。」
月娘の気持ちは壬氏よりは分かっている気がした。
多分壬氏だって本当は分かっている。
「……受け取るわよ…だからせめて挿してよ…。」
そう言って目を伏せた月娘の目には、やはり涙は無かった。
この人はいつ泣くのだろう。
何度も自分の気持ちを受け止めて貰えずに、何に手放しても貰えずに。
ただこうして壬氏の愛を手探りで求めている。
(この簪を挿せば主君の気持ちは少しだけでも伝わるのだろうか。)
不器用な2人に、少しだけ汲んであげたい気持ちだった。
高順は壬氏が用意した簪を手に取った。
その高順の行動を、月娘は黙って見ていた。
「…何してるんですか?壬氏様…。」
「………後宮の秩序を守ろうと…。」
「月娘様は後宮の人間では無いですし、ここは後宮の外です。」
月娘の邪魔をするのが壬氏だったとは…。
隣にある月娘の部屋を気にしてウロウロしている壬氏を見ながら、呆れた顔をした。