【薬屋のひとりごと】後宮の外に咲く毒の華【R指定】
第5章 花街に毒の華が咲く
壬氏が月娘との婚姻を取りやめてから、太師からこの様に詰められたのは初めてだった。
確かに世間では、月娘は皇弟から婚約破棄をされた娘だった。
だけど月娘の身体はもう壬氏のモノだった。
皇弟が手を付けた女人を、他の男が触れる事は同じ大罪だった。
壬氏からすれば、月娘と夜伽をした。
それは月娘に自分の女人だと示す行動だった。
何人たりとも誰も彼女に触れさせない為に。
(だからってそんな事言える訳が無い!)
太師に対して、もう月娘と一夜どころか、婚姻の口約束はしている。
そんな無責任な行動を堂々と言える訳が無かった。
あの行為は、月娘に自分の気持ちを伝える為の行為で。
公言する気は無かった。
「……月娘と俺はちゃんと未来を誓っている。誰がなんと言おうと月娘は俺の女人だ。」
「…………………。」
歯切れの悪い言葉だったけど、壬氏の言いたい事は伝わった様だ。
「……なら、全力で私が娘を連れ帰ります。」