【薬屋のひとりごと】後宮の外に咲く毒の華【R指定】
第5章 花街に毒の華が咲く
「…皇太弟殿下……。」
壬氏は知っている。
いつも沈着冷静な太師がこの様に慌てている時は、大抵月娘絡みだ。
「あっ!!」
壬氏は太師の持っている文を取り上げると、徐にそれを読み始めた。
「………………。」
僑香からの報告を読んで壬氏は固まった。
「……何を考えてるんだ月娘は…。」
文を持つ壬氏の手が震えた。
当たり前だ。その文には月娘が綠青館の妓女として競り合いに出ると言う内容なのだ。
「月娘は殿下との婚姻が無くなってから心身を病んでまして…。」
月娘が愚行を起こす度に太師が言う言い訳だ。
「だからって正気じゃ無いぞこんな事!!今回首が飛ぶのは月娘自身だぞ!!」
皇室の女人を他の男が触れるのは大罪だ。
そして、それはどんな理由であれど、触れられた月娘も然りだ。
先程まで真っ青な顔をしていた太師の顔付きが変わった。
「…それは月娘が殿下の婚約者だと公表すると言う事ですか?」
その太師の言葉に壬氏は一瞬顔を顰めた。