【薬屋のひとりごと】後宮の外に咲く毒の華【R指定】
第5章 花街に毒の華が咲く
とんだ里帰りになりそうだ…。
猫猫の心中は不安しか無かった。
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「馬車はここまでです。」
「まぁ……。」
猫猫と一緒に、羽織を頭から被った月娘が、ため息混じりに声を出した。
花街は昼間は静かな街だと勝手に想像していたが、賑やかに人々が行き交っていた。
「……随分と賑やかなのね…。」
「ああ、今日明日は特別なんです。」
猫猫はキョロキョロしている月娘の顔を、深く羽織を被せて隠した。
「ここが綠青館です。」
そう言って猫猫の指先を辿って月娘は目線を上げた。
老舗と謳うのも納得いく門構えで、他の妓楼館に比べると大きさはかなりデカい。
「……何かお祭りがあるの?」
月娘は綠青館の2階部分の広場に赤い車幕が何重にも重なって風に揺らいでいるのを見て言った。
周りも想像以上に賑やかだし。
「明日は年に一回の、綠青館の新人の妓女のお披露目なんです。あそこの広場に妓女が並んで気に入った1人の妓女をお客さんが競り合うのです。」