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ハツコイソウ【ゴーストハント/滝川法生】

第2章 人形の家


勢いよく引っ張られ、結衣はその場に倒れ込む。
徐々に二人は井戸へと引っ張られており、結衣は振り向いて綾子へと手を伸ばした。


「綾子……!」


あそこには落ちたくない。
あの影が、あの女があそこにはいる……。


「綾子、助けてっ!!」


綾子へと助けを求めるが、彼女はパニックを起こしていた。


「麻衣、結衣!麻衣ぃ!」

「谷山さんたち!」


すると、ベースから駆けつけたリンが勢いよく居間に飛び込んできた。


「リンさん!」


麻衣の手を掴みながら結衣はリンへと手を伸ばす。
あそこに落ちてしまえば、あの霊に何かをされてしまうかもしれない。

恐怖が這い上がってくる。
助けて……と結衣は必死にリンへと手を伸ばし、リンも結衣へと手を伸ばしたが遅かった。

結衣と麻衣は井戸へと落ちていった。





ピチョン……



何か、水の音が聞こえる。

ふと、結衣は瞼を押し上げた。
視界には見た事もない天井が広がっていて、視線を彷徨わせると何故か和室にいた。


「結衣!」

「麻衣……、ここ……どこ?」


隣には麻衣がいるが、彼女の問に首を横に振る。
何故か二人は知らない場所、知らない和室に寝そべっていたのだ。

二人は戸惑いながらも視線を彷徨わせていれば、ボールが弾む音が聞こえてきた。


「……女の子」


庭先に、礼美ぐらいの背丈の女の子がボールを弾ませ遊んでいる。
後ろ姿しか見えないが、おかっぱの髪の毛に着物を身につけていた。


(礼美ちゃんじゃない……どこの子?)


すると女の子の元に黒ずくめの男が近付いた。
男は女の子に何かを喋っているが、結衣と麻衣は直ぐに駄目だと直感で感じた。


(駄目、駄目だよ……その人は駄目)


何故か、さっきまで声が出ていたはずなのに声が出ない。


(待って!)


女の子は男と手を繋いで歩き出す。


(駄目だよ!待って!!)


男と女の子は池の上を歩いていく。
それを追い掛けるように手を伸ばした時、叫び声が聞こえた。


「富子!」


結衣と麻衣の隣を、着物姿の女が走り抜けた。


(もしかして、あの女の子のお母さん……?)
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