第2章 人形の家
子ども扱いされている。
その事に結衣はむくれてしまうが、法生が自分を心配して言っていることは理解出来ていた。
「わかった……」
「いい子だな。んじゃ、行ってくるわ」
「行ってらっしゃい……」
手を振り、タクシーで出ていく法生とジョンと真砂子を見送った結衣はベースへと戻った。
麻衣はというと、綾子が『怖いから一緒にいて』と言うもので、居間へと向かっていた。
(怖いって……霊能者なのに?)
本当は結衣も居間に行こうとしたが、法生が綾子に伝えていたようで、彼女だけはベースに居るよう言われた。
「心配性だなぁ……」
ポツリと呟きながら、結衣はモニターを見守る。
モニターには巫女装束の綾子と、少し離れた先に正座している麻衣の姿。
また、あの女の影が出てきた時大丈夫だろうか、綾子だけで太刀打ち出来るだろうか。
そんな不安を抱えながら結衣はモニターを見つめた。
「このおくとこを かりのさいじょうと はらいきよめ ひもろにたて おまつり しずめまつる」
ベースにはモニター越しに聞こえる綾子の祝詞が聞こえる。
「あきつかみと おおやしまのくにに しろしめす……」
綾子の祝詞に反応するかのように、ラップ音が聞こえ始める。
その音に綾子は言葉を止めてしまっていた。
「綾子、つづけて!」
「わ、わかってるわよ!きゃ……」
「綾子!」
「誰かがさわったのよ!」
「しっかりしなよ!あんた、巫女でしょ……」
ふと、麻衣の声が途切れた。
その事に結衣は眉を寄せ、彼女の顔を見ると、麻衣の表情は強ばっている。
「麻衣……?」
何かに怖がっているような表情。
その様子に、何か嫌な予感がした結衣は気づいた時にはベースから飛び出していた。
「谷山さん!?」
ベースからリンの制止する声が飛ぶ。
だがそれを気にせず麻衣の元へと走れば、彼女は目に見えない何者かに井戸へと引き摺られていた。
「麻衣!?」
「結衣……!!」
麻衣は助けを求めるように、結衣へと手を伸ばしていた。
彼女はそれに気付いて、直ぐに走り出すと麻衣の手を掴むが、目に見えない何者かは結衣ごと引き摺り込もうと引っ張っていく。