第2章 人形の家
ベースに戻り、真砂子はあの女の影を見て表情を強ばらせていた。
「ここには女の霊がいます。奥深いところにひそんで……母親のふりをして子どもたちの霊を呼んでいます。……子どもたちは家に帰りたいのですけど、道に迷って出られないのですわ。女は子どもたちをつかって新たな霊を呼んでいるんです。ミニー……立花ゆきさんは子どもたちのリーダーですけど、ほんとは苦しくて悲しくて……もうこんなことはイヤだといっています」
その言葉に、結衣は昨日の事を思い出す。
法生の真言に苦しんで泣き叫んでいた子どもたちの声。
あれを思い出し、結衣は泣きそうな表情に変わった。
「『とみこ』というのは?」
「……女の子どもです。女は子どもをさがしていますの。自分の娘を……それで子どもを集めているのですわ」
「……そういうことか」
真砂子の言葉を聞いたナルは、何かを思いついたかのような表情に変わる。
そして全員に背中を向けると、ベースから出ていってしまうので、驚いた表情で麻衣が声をかけた。
「ナル?どこにいくの?」
「出かけてくる。帰りはいつになるかわからない、あとをたのむ」
「ちょっ……ナル!?」
「何処に行くぐらい言ってよ!」
双子の言葉を全て無視し、ナルはベースの扉を閉めると本当に出て行ってしまった。
閉まってしまった扉を全員が唖然とした表情で見つめ、どうしようかという雰囲気になってしまう。
ナルは何処に出掛けたんだろう。
結衣は溜息を吐き出していれば、静寂を破るように法生が声を出した。
「……ところで。こんどは、どっちが除霊にチャレンジするよ?」
法生は綾子とジョンへと視線を向けた。
すると綾子は溜息を吐き出すと、前へと出た。
「──いいわ、アタシがやる。ぼーさんとジョンは礼美ちゃんのほうにいって」
綾子の言葉通り、ジョンと法生、そして真砂子が礼美の元に向かう事に。
そんな二人を見送る為、結衣は玄関の元にいれば、法生が彼女の元に歩み寄った。
「結衣、気を付けろよ」
「え?」
「オマエ、一回あの女に危害加えられてんだ。また狙われる可能性がある。出来りゃ、ベースにいとけ。な?」
法生はまるで幼子に言い聞かせるようにし、頭を優しく撫でる。