第1章 悪霊がいっぱい!?
黒田を見ながら、渋谷は何かを考える素振りを見せる。
「君、霊感があるんだったら旧校舎についてなにか感じないか」
「旧校舎?ああ、あそこには戦争で死んだ人の霊が集まってるみたいね」
「戦争で?いつの?」
「もちろん第二次世界大戦よ。きっとあそこには病院があったのね。看護婦らしいのや……包帯を巻いた霊も見たわ」
その言葉に結衣は『おや?』と首を傾げる。
旧校舎が病院だったという話は聞いたこともなければ、そんなこと知りもしなかった。
(あたしが知らないだけだったのかな?)
そう思っていたが、どうやら違ったらしい。
「……ふうん。大戦中ここに病院があったとは知らなかったな。この学校は戦前からあったと聞いたんだが。むかしは医学部でも?」
「そっ、そんなこと知らないわよ!とにかくわたしは見たの!霊感のない人にはわからないわ!」
「校長先生が旧校舎が取り壊せなくて困るとボヤいていたな。君が除霊してあげればいいと思うが?」
騒ぎ始めた黒田と、ずっと落ち着いた様子の渋谷。
そんな2人に結衣と麻衣は溜息を吐き出しながらその様子を眺めていた。
すると、ミチル達は黒田達の様子にやる気を無くしたのだろう。
何処と無く気まずそうな表情を浮かべながら、渋谷へと声をかけた。
「あのう……渋谷先輩。今日はやめませんか」
「あ、あたしもなんか気が乗らないや」
「……そう。じゃあまたいつか」
渋谷は残念そうな雰囲気は無く、薄く微笑んでいた。
そして教室を出ようとして、その足を止めてこちらを振り返ると黒田が彼を睨む。
「……なによ!」
「いや。ああ、谷山さんたちちょっと」
「え……?」
「なんでしょう」
「少し時間をくれないか」
渋谷の言葉に、二人はすぐさま『嫌だ!!』と心の中で叫んだのだが、渋谷の目はそれを断れそうな雰囲気が無かった。
(嫌だと言わせてくれない雰囲気……)
二人は涙を流したい気分だった。
「「はい……」」
嫌々、2人は渋谷について歩き出した。
「ところで、君たちは姉妹か?」
「双子ですけどぉ……」
「ふうん。どっちが姉?」
「あたしが姉の結衣です」
「あしたが妹の麻衣です」
「へぇ……」