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ハツコイソウ【ゴーストハント/滝川法生】

第2章 人形の家


「消化器持ってきたよ!」

「ナル!消化器もう1本あったよ!」

「おい、元栓しめたほうがよかないか!?」


そこからは大騒ぎ。
数分かけてからやっと火は消し止められ、大きな火事にならずに済んだ。

だが、あたしたちはげっそりとしていた。
大きな火事にならないようにと、慌てていたせいで疲れが一気に押し寄せたのである。


(まさか、こんなことになるなんて……ん?)


不意に窓の外が気になった。
なにか黒い影がある……と思ってみれば、そこにはこちらを窓の外から覗く子供の影。


「誰かいる!!」

「どうした、結衣?」

「ナル!だれかいる!」


あたしの声に続いて麻衣もそう言う。
すると、こちらの声に気付いたのか影は一瞬で消えてしまった。


「……だれもいない」


ナルが窓を開けて外を確認する。


「うそ!さっきいたんだよ。ね!麻衣みたよね!?」

「見た!いたの!中を覗いてた、子どもが……」


そこであたし達は思わず典子さんを見た。
この家にいる子どもというと、礼美ちゃんしかいない。


「でも……礼美はもう、ねてるはずよ。わたしの部屋で……」


あたし達は慌てて典子さんの部屋へと向かった。
ほんの少しだけ開いている扉の隙間から、中を覗いてみれば礼美ちゃんが床に座っている。


「ミニー、おふとんをかけてあげるね」


一人でそう呟いて、床に寝かしているミニーにハンカチをかけてあげている。


「礼美」


典子さんが部屋に入ると電気をつけてから彼女に声をかけた。
礼美ちゃんは典子さんを見るなり立ち上がり、『どうしたの?』と言いたげに首を傾げる。


「礼美、さっき台所をのぞいてた?」

「ううん」

「でも、麻衣ちゃんと結衣ちゃんが子どもがいたって。ほんとはお庭からのぞいてたんでしょ!?」

「ちがうもん」

「礼美!」

「ちがうもん。礼美じゃないもん!」

「礼美……」


その時、上から誰かが殴るような音が響いてきた。
その音がだんだん強くなり、電気が揺れ始める。


「な、なに!?」

「礼美じゃないもん」


まるで礼美ちゃんの声に反応するかのように、徐々に音が大きくなる。


「ちがうもんっ!」


その音は大きくなり、家自体が揺れ始める。
まるで大きな地震がきているかのよう。
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