第2章 人形の家
そして綾子は自信満々に、礼美ちゃんの部屋でお祓いをすると言い、相変わらずの派手な化粧に似合わない巫女装束でお祓いを始めた。
アタシ達は、そんな綾子の様子をモニター越しで見守ることに。
「綾子でホントに祓えるのかなあ」
「ま、綾子じゃ不安だよなあ」
「ぼーさんも同じだけどね」
「言ってくれるじゃねぇか、お嬢ちゃん」
生意気を言うあたしの頬をぼーさんは引っ張ってくる。
抵抗して『嫌だ』と言うが、本心では嫌がってはいない。
何気にぼーさんはスキンシップが多いから、それが嬉しかったりする。
「騒ぐなら帰れ」
だが、あたしのボスは騒ぐのを許さないのでぼーさんと二人で静かに綾子の様子を見守ることにした。
「つつしんでかんじょうたてまつる みやしろなきこのところにこうりんちんざしたまいてーーしんぐのはらいかずかずかずたいらけくらやすらけくーー」
綾子のお祓いが終わったあと、ボスの命令であたしと麻衣は各部屋の温度を測りに出た。
そしてそれぞれの部屋の温度を測り終え、麻衣と共にベースを出れば、高笑いしている綾子の姿。
「楽勝よ楽勝!これで事件は解決したもどーぜん!」
「どうだが」
「ナル、これ。各部屋の温度調べたやつ」
ナルにバインダーを渡せば、彼はそれをじっくりと鋭い目つきで見ていく。
「……礼美ちゃんの部屋がすこし低いな」
その言葉にあたしと麻衣は顔を青ざめさせる。
ナル曰く、霊の出る場所の温度は低くなるらしい。
「家自体には歪みもひずみもなし、床もほぼ水平。地下の水脈の水量が減ってるようすもないから地盤沈下でもない」
「……じゃ、じゃあ犯人はやっぱり……霊?」
「その可能性がふえてきたな」
「ひぃ……」
思わず小さく悲鳴をあげてしまった。
すると、台所の方からとてつもない香奈さんの悲鳴が聞こえてきた。
「香奈さん!?」
「どうし……って!?」
台所に駆けつけてみれば、コンロからとてつもない勢いで火が吹き出していたのだ。
「あ……あ。きゅ……きゅうに火が」
「さがってください。典子さん消化器を!」
典子さんが慌てて消化器を持ってきて、それをぼーさんが受け取り火にかけていく。
あたしは慌てて他に消化器がないかと典子さんにたずね、場所を教えてもらい持ってきた。