第2章 人形の家
(小さい頃の麻衣と一緒で可愛い!)
こんなこと誰かに言えば『シスコン』と言われるかもしれないが、姉としては妹は可愛いものである。
「礼美、ご本読んでたの?」
典子さんがそう声をかけた瞬間、礼美ちゃんは身体を跳ねさせて何処か緊張したような面持ちになった。
そんな様子に思わず麻衣と典子さんと顔を見合わせる。
「ほら、おやつ食べよ?」
「……礼美、いらない」
さっきまであんなに、にこにこと笑顔だったのに今の礼美ちゃんは暗い表情でそっぽを向いてしまった。
(どうしたんだろう……きゅうに)
その夜。
ナルは森下家のみんなに暗示をかける為集まってもらっていた。
部屋は真っ暗にして、ついたり消えたりするライトを彼女達の目の前におく。
「光に注目してください。光にあわせて、息をしてください。ゆっくりと……」
ナルが今しているのは、催眠術のようなもの。
ポルターガイストの犯人が人間か、それとも幽霊なのかを調べる為に行うもの。
ナルが言うには、人間がポルターガイストをおこした場合はイタズラとかではなく、極端にストレスの溜まっている人が無意識に超能力をつかってしまい、ポルターガイストを起こしてしまうらしい。
「今夜、花瓶が動きます。ガラスの小さな花瓶です。今夜はこの部屋のテーブルの上にあります」
香奈さんと、典子さんと彼女の膝に座っている礼美ちゃんは少し眠たげな目をしていた。
あれは暗示にかかっている証拠らしい。
ふと、ナルがあたし達を見る。
それを合図に麻衣が家の電気の明かりをつけた。
「けっこうです。あとはご自由におすごしください。森下さん、この部屋のカギを」
「あ、はい」
3人の目が、ナルが持っている花瓶へと向いた。
それは暗示が成功した証拠である。
(たしか、暗示が成功してなかったら花瓶をみないってナルが言ってたもんね)
ナルから花瓶を受け取り、机の上に置いて麻衣がそのまわりをチョークで線を書いて囲む。
「花瓶のまわりなぞったよ」
「よし、部屋から出ろ」
もし犯人が人間である場合、花瓶は動く。
だがもし花瓶が動かなければ、その犯人は人ではない何か。
あたしと麻衣はナルが部屋に鍵をかけたのを見てから、ベースへと戻った。
あとは設置したカメラの様子を見たりと過ごすだけ。