第10章 悪夢の棲む家
「建物に問題があるからだろう」
人が居着かないという言葉に広田は直ぐさまそう言う。
「不動産屋はそのへんの事に口が堅いからですねぇ。それで出入りの施工業者をあたってみたんですけど──」
『あそこん家は何度か持ち主が変わってるんだよなぁ。いちばん長がったのが前の……えーと……そうそう竹中さんだ。十三年ぐらい持ってたかなぁ。自分たちは二ヶ月ぐらいしか住んでなくて、あとはずっと貸家にしてたんだけど。でも今で二年以上あの家に住んでた人はいなかったねぇ』
「──なぜ」
安原の言葉に広田は眉を寄せながら、堅い声でそう尋ねる。
「理由は様々だったようです。ただ『家が変だ』『何かいる』『出る』と訴えた人がいたようですね。雨漏りや家自体のトラブルも多くて、担当者は思いっきり嫌な顔をしてました」
「ずっと笹倉が何かやっていたという事か?」
「それが貸家になった当初からちらほらとそんな話を聞いたとその業者は言うんです。十三年前ですから、六年前に越してきた笹倉氏は関係ありませんよね。とにかく、もうちょっと調査半径を広げてみますが……ひょっとしてもう必要ありません?」
「──いや、とりあえず続けてください」
「……んで?なんだかよーわからんが、とにかく家の中のトラブルについてはちゃんと足のある犯人がいるわけな。なら除霊云々より犯人を捕まえたほうがいいんじゃねぇのか?」
法生は崩した体制から正座になる。
そんな法生を見ながら結衣も確かにその方が良いのではないだろうかと考えた。
幽霊がいたから除霊した……というのは一時しのぎではないだろうか。
それならちゃんと犯人を捕まえたほうがいい。
「拝み屋の俺が言うのもなんだが、よほど迷信深いタイプでない限り『幽霊がいたけど除霊しました』ってより『誰かのイタズラで犯人はコイツです』って言われたほうがずっと安心すると思うけどなぁ」
「俺もそう思う。だが笹倉が犯人だという証拠はあるのか?」
「直接証拠はないな。犯人が侵入してきたところをカメラに捕えられればいいんだが」
ふと、廊下から階段を誰かが降りてくる音が聞こえた。
「──広田さん?みなさん、そちらの部屋ですか?」
どうやら翠が降りてきたらしい。
結衣達はなにかあったのだろうかと思い、廊下を出てから翠の元に向かった。