第10章 悪夢の棲む家
階段の所には翠と阿川夫人がいた。
阿川夫人の顔色は未だによくないが、あの時に比べたらマシになってはいる。
「おばさん。休んでいなくて大丈夫ですか?」
「ええ、ごめんなさいね。ちょっとぼうっとしちゃって」
「さっきチャイムが鳴ったみたいですけど、呼んだって言ってた方がいらっしゃったんですか?」
「あ、はい。ご紹介しますね。えっと──」
麻衣が法生を紹介しようとした時だった。
インターホンがそれを遮るように鳴り、誰もが誰が来たのだろうと思っていれば翠が玄関を開けた。
「ねえ、もうお夕飯は済んだ?」
玄関を開けるとそこには噂をしていた笹倉夫人がいた。
「お客さんがたくさんいるみたいだから、差し入れに来てあげたのよ」
広田は『またでた』と思い、双子と法生は『あれが噂の……』とすこし押され気味になっていた。
「下ごしらえだけしてきたから、ちょっと火を貸してもらえるかしら」
「いえ、いいです。申し訳ないし、そんな事していただく理由もありませんから」
翠は戸惑いながらも、なんとか断ろうとしていたがそれを笹倉夫人が押す。
「なぁに言ってるのよ。困った時はお互い様、お隣同士じゃないの。お台所借りるわねぇ」
「あの……ちょっと待ってください!」
その様子を見ていた広田は眉を寄せながらも、ベースから見ていたナルへと視線を向けた。
「渋谷くん。こういう事はさっさと白黒をつけてしまったほうがいいと思う。上がってもらいなさい、翠さん」
「でも」
「そうでしょ。大勢のご飯って大変ですものねぇ」
広田は笹倉夫人を中に招き入れ、彼女を居間へと入れる。
「そこに座ってください」
広田はソファへ座るよう促す。
「でも料理を」
「後でいいですから。少しお話したいんです」
「話……?何かしら」
笹倉夫人はチラリと居間にあるカメラを見る。
そして促された通りにソファに腰掛けた。
「このところ、こちらのお宅では電化製品の故障が相次いでいまして。調べてみたらそれが全部誰かが故意にやった悪質な嫌がらせだとわかったんです」
「まあ……大変ねぇ」
「犯人は笹倉さんではないかと思われます」
ハッキリと告げた広田に、阿川母娘は目を見開かせた。
そして笹倉夫人は逆上したように叫ぶ。