第10章 悪夢の棲む家
いつの間に調べんたんだ……と結衣は驚いた。
毎回だがナルの説明には驚かされるばかりであり、いつ調べたのか不明な時もある。
「他の電気系統のトラブルも似たり寄ったりで、どれも一見わからないようにうまく偽装してあった。単純な細工から手の込んだものまで、明らかに誰かの故意だな。ご苦労な事だ」
「え、じゃあ。もしかして家の中の物が動いてたりとかもそうなの?」
「確定はできないが他の例から考えても同様だろうな。少なくとも翠さんの訴えの範囲内では作為的に起こせないトラブルはない」
「……つまり誰かが故意に小細工をしてるって事か?家の中に侵入してして?なんでんな事すんのよ」
「それは犯人に訊いてみなければわからないが──安原さん」
「はい!」
「どうでした」
安原は鞄からパソコンを取り出す。
「はい、ええと……あ、これ資料のコピーです。まずこの家の自殺者の件なんですが──図書館ら新聞や区報までチェックしましたが、発見できませんでした」
「え!?」
「じゃあ自殺者はいない!?」
「やはりな……」
双子と広田は驚いた表情を浮かべた。
翠と広田は隣の住人、笹倉夫人が『自殺者がいた』と聞いていたのだから。
「付近の聞き込みもしてみましたが、昔からの噂に詳しいような人物が見つからないんです。と、いうものですね。この辺りはここ二十年ほどの間に急激に開発されて町になった地区でして、人の流入も激しい地区や番地も何度も改正されているんですよ。あまり近所付き合いの盛んな土地柄じゃないようだし──結局いつの事だかわかりませんが、この家で自殺があったという話を知っていたのは一人だけでした」
「ひょっとして隣の笹倉さんだけ?」
「ご名答です」
ふと、広田はある事を思い出した。
笹倉夫人が訪ねきてに来た時に、『この間もその事を聞きに来た男の子がいたわ』と言っていたことを。
「もしかして笹倉家に聞き込みに来たというのは……」
「僕の事だと思います。笹倉一家が隣の家に越してきたのが六年前。なのでそれ以前からこの近所に住んでいた人を探して聞いてみたんですが、誰一人自殺事件について知っている人はいませんでした」
「笹倉が嘘をついている可能性があると?しかし……なぜ?」