第10章 悪夢の棲む家
ナルの言葉にますます法生は顔を顰める。
「なんでしたら、ドライアイスでもレーザーでも演出用に用意しますが?」
「いらんわ!なんのためにんな事すんのよ」
「言っただろう。除霊をしたと思わせるためだ」
「ちょいちょいちょーい待ち!大体の依頼内容は安原と結衣に聞いたけどな、ここんちじゃつまりポルターガイストかなんかが起こってるわけでしょーが。形だけ除霊してどうすんの。状況が改善できなきゃ依頼者だって納得せんだろーに」
法生は呆れたような困ったような表情だ。
その表情はナルがとんでもない事を言い出した……と言いたげでもあった。
「それについては演出用の道具を用意した。あれで問題ない筈だ」
「……つまり何か?俺に嘘っこの除霊をぶちかませ、と?成功したかのようにお前らが演出してくれるってわけか?」
「そういう事だ」
「俺をなめとんのか、このガキ」
法生が怒りが滲んた言葉を放った時、ベースの障子が勢いよく開いて広田が姿を現して叫んだ。
「──聞いたぞ、このペテン師ども!何が『怪奇現象の原因を徹底的に調べる』だ!思わせ振りな事を言って翠さんたちを信用させておいて、大金を巻き上げるつもりだったんだろう!」
「広田さん?どうしたの、そんな大声出して……」
「広田さーん?みんな緑茶でいいって──」
ダイニングにいた双子が広田の大声を聞きつけてやって来たのだが、その双子に広田は鋭い視線を向けた。
「きみたちも!やはり阿川さん母娘を騙すつもりだっただな。いかにも親身になっているようなふりをして」
「え……なに、急に……」
突然の言葉に結衣は困惑しながら首を傾げる。
「ああ……確かにこれは大変そうだな」
「ね」
法生は面倒臭いものを見るような目を向け、安原は相変わらずの笑みを浮かべている。
だが広田はそんな言葉は聞こえていないようで、怒りながらかなりの大声を出す。
「もう少しで俺まで騙されるところだった。こんな得体の知れん男を使って、小道具で演出して除霊をしたように見せかけて──」
「え?ぼーさんは偽薬じゃなかったの?」
「偽薬だと?なんだそれは」
「いま、説明します。どうしてこう、どいつもこいつも単純なんだ」
「なん──」
「座りなさい」