第10章 悪夢の棲む家
「──は?」
専門用語を出された広田は怪訝そうにする。
そんな彼に麻衣は鼻高々に説明を始めた。
「変成意識のときに超能力や霊能力は鋭敏になんの。いつものあたしと結衣はごくフツーの女の子だけど、寝ボケて意識が変成すると第六感のオンナになっちゃうんだから!そこんとこよーく考えてから言ってよね」
「自分で言ってて情けなくならなかったか?」
ナルの鋭い言葉に麻衣が萎れる。
それを見て結衣はとうとう耐えきれなくなり、肩を震わせながら顔を逸らして笑い出す。
「ついでにお聞きしますが、変成意識状というのは催眠下の意識をもって示すんですが、半覚醒状態による霊感と催眠状態による幻覚をどう区別するんですか?」
「それは……」
「できれば素人さんに聞きかじりの受け売りでものを言って欲しくないのですが?」
「すみません……」
完全に項垂れた麻衣を結衣はケラケラと笑いながら背中をさすってやる。
「あははは!」
「笑うなぁ!!」
「この馬鹿者の言葉は無視してください。妙な発言も無視してくださって結構です。麻衣と結衣は単に自分に感じた事を述べただけに過ぎない。それに意味があるのか戯言に過ぎないのかは調査を進めてみれば分かります」
「そんなの当然──」
「ちなみに、僕が彼女に詳しく聞こうとしたのは過去に彼女達の戯言が単なる戯言ではなかったという実績が数多くあるからです。だが、それもあなたには関係のない話ですから無視していただいで構いません」
「あ、ああ……」
なんて話していれば居間から固定電話が着信を知らせす音が鳴り響ていた。
その音に全員が気付いて、直ぐさま双子と広田はベースを飛び出す。
一方、ダイニングにいた阿川夫人は恐る恐ると固定電話へと近づいていた。
そしてゆっくりとその電話を手に取る。
「……はい。阿川です」
娘には出なくていい。
そう言われていたが、阿川夫人は出てしまった。
そして電話の向こう側からはノイズでざわついた音と共に声が聞こえてくる。
「出テ行ケ。早ク出テ行ケ。出テ行カナイト祟リ殺シテヤル」
そんな言葉が聞こえたのと同時に、居間に双子と広田が入ってきた。
彼女たちが見たのは固定電話を戻して、手で顔を覆いながら項垂れている阿川夫人だった。