第10章 悪夢の棲む家
「ボロ隠しのつもりなんじゃないか?窓の外がすぐ隣の壁だし」
「しかし前の持ち主は自分達が住むつもりで改装したんでしょう。広田さんが持ち主だとしたら、窓に鏡を嵌めようなんて思いますか?」
「……まあ、確かにどれだけ採光が悪かろうと普通のガラス窓のほうがいいな」
「──まるで窓の外を見たくないようだ。何か窓を塞ぎたくなる理由があったのか……」
広田は少しだけ眉を顰める。
「幽霊が見えるせいだなんて言い出すんじゃないだろうな?理由なんて前の持ち主に聞けばいいだろう」
「そう出来ればね。彼らは不動産屋に転居先は知らせていないんです。この家を売却した不動産屋は、ここが賃貸物件だった間もずっと仲介をしていた。長い付き合いがあった筈はずです──にもかかわらず、後で知らせると言い残したきり連絡はないとか」
「ここが欠陥住宅だとわかっていたからじゃないのか?もめ事になるのを警戒して、あえて知らせなかったんじゃ」
「その可能性もあります」
ふと、コツン……という音がした。
その音に広田もナルを黙ってから、音が聞こえた方へと視線を向ける。
音がしたのは鏡となっている窓であった。
コツン……コツン……と何度も窓をノックするような音が響いてくる。
しばらくその音は続いていたが、やがて消えていき、広田が慌てた様子で窓を開けた。
「誰かいましたか?」
「──いや……」
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仮眠から起きた双子は洗面台で顔を洗っていた。
あまり長いとは言えない睡眠ではあるが、十分疲れは取れたなと結衣は背伸びをする。
「……うっし!本日もガンバっていこう!」
「そうだねぇ〜」
二人はベースへと向かう為、廊下を歩きながら背伸びをする。
そしてふと、廊下の突き当たりにある大きな鏡に視線が二人揃って向いた。
「んー……なーんとなく、この鏡気になるんだよねぇ」
「あたしも気になる。おっきいからかなぁ……なかなかこんな大きな鏡ないもんね」
二人揃って鏡を見ていれば、背後で扉が開く音がした。
その音にびくついてから、思わず二人は振り向いた。
入っちゃだめ
入らないで
そのまま出て行って……!
何故か二人揃ってそう思った。
「ただいま」