第10章 悪夢の棲む家
電話を切った広田は考え込む。
デイヴィスという自分と、渋谷という少年について。
(……もしあいつがデイヴィス本人ならなおさらあの年頃で、あんな『重大事件』を起こしおいてしらばっくれていられるような人間を翠さんたちのそばに置いておくわけにはいかない。いっそ連中に俺の本当の目的をバラすか?)
体をほんの少し屈め、広田は首を撫ぜる。
「──せめて何かひとつでも確証がつかめていればな……」
暫く広田は考え込んだ。
そしてある事を思いついた。
「……よし!」
広田は二階の和室から出ると、例の連中がいる和室へと向かった。
「──ええ?広田さん本気ですか!?」
「本気だ。俺をきみたちの手伝いに使ってくれ」
「手伝いに使ってくれって……」
「また、なんでそんな……」
双子達は突然の広田の申し出に困惑していた。
だがナルは無表情で広田を見ており、そのナルを広田は睨むように見ている。
「……さっき谷山さんたちが」
「あ、あたしたちがなにか?」
「きみたちは単に調べているだけだと言っていた。無理に幽霊のせいにする気はない、と。それは本当だろうか?」
「僕は心霊現象について調べているんです。そうでもないのに関わり合って時間を無駄にしたくはありません」
「俺もここで何が起こっているのかを知りたい。それに外野でいるよりきみたちと行動したほうが、真実に近いのじゃないかと思う。だから手伝わせてほしい」
広田の言葉にナルが薄く笑う。
「……監視ですか」
「──それは否定しない」
「僕は人使いが荒いですよ」
「構わない」
「と、いう事だ。麻衣、結衣。アシスタントに使え」
「あ、アシスタントに?」
「けど──」
結衣は少し警戒していた。
松山とほんの少し似ている広田に、作業の邪魔をされないだろうかと。
何かと文句を言われたりねちっこくされないだろうかと、広田へと少し警戒した目を向けてしまう。
(うーん……でもなんか悪い人ではなさそうだしなぁ)
頭をかきながら悩んでいれば、広田は双子たちへと視線を向けた。
「構わない。こき使ってくれ」
「でも昼夜関係なく動くことになりますよ。広田さんお勤めがあるでしょ?」
「それなら──そういえば、きみら学校は?」