第10章 悪夢の棲む家
ふと、翠は暗い表情になった。
そんな彼女に双子が心配そうに顔を覗き込もうとすれば、翠は恐る恐るというように訊いてきた。
「……この家、やっぱり何かいるみたい?」
「うーん……まだなんとも……。特にあたしと結衣はまだ半人前なんで迂闊な事は言えないです」
「でも普通の人とは半人前分違うのよね?私にとっては一番気になる事なの。ただのトラブルだったらそれに超したことはないけど、もしもそうでないんだったら覚悟をしておきたい」
その言葉に双子は顔を見合せた。
そして二人揃って玄関に踏み入った時の違和感について思い出す。
機材を運び込む時、二人で話していた。
玄関に踏み入った時に何故か誰もいないと錯覚してしまった事について。
(あの時、二人揃って誰もいないと思った。麻衣もあたしも……)
なんとも言えない違和感。
それを二人揃って思い出して二人で頷きあい、麻衣が翠に声をかけた。
「あたしと結衣の個人的な意見でもいいですか?全然アテにならないですけど」
「……いいわ」
「──家に入るとき、ちょっと変な感じがしました」
「玄関に入った時なんですけど、凄く不安になりました。何故か誰もいないような……そんな感じで。帰ったらいるはずの人達がいなかったというような気持ち……」
「変ですよね。目の前に翠さんがいたのに。だからひょっとしたらと思いました」
双子達の言葉に翠は自分が感じた違和感を思い出す。
『どうして誰もいないの……?』
あの感覚を彼女達も感じた。
その事に翠は少し顔を俯かせて考える。
「でもっ、あたし達なんかホントにホンットーに!アテになりませんから!」
「とにかく調査がんばりますから!」
「ありがとう……」
初めて翠が安堵したように微笑んだ姿を見た双子は、顔を見合わせてから小さく笑う。
「そういえば……谷山さん達って姉妹?」
「あ、双子なんです。二卵生の」
「そうなのね。初めて谷山さん達にお会いした時、二人とも何処となく似てたし苗字も一緒だったから姉妹なのかなっと思ってたけど、双子だったのね」
「そーなんです。あ、別に名前で呼んでもらってもいいですよ」
「じゃあ……そうさせてもらうね」
翠の微笑む姿に双子達は少しだけ安堵した。
彼女はよく暗い表情をしていたから。